製造ラインを安定的に稼働させ、事業を継続するために設備保全は欠かせません。時間や手間がかかることから、DX化が進んでいます。
この記事では、設備保全DXの基本情報や設備保全の種類、DX化が求められる理由などを解説します。設備保全のDX化を検討している人は、参考にしてください。
設備保全DXの基本情報
設備保全DXの基本情報として、はじめに設備保全とDXについてそれぞれ解説します。
設備保全とは?
設備保全とは、工場の生産設備や各種機械、IT機器などを万全な状態で継続的に稼働させるための、点検・メンテナンス・修理のことです。設備や機械は経年劣化を防げず、長期間の使用によって消耗したり故障したりします。
生産のストップや不良品の発生などにつながるため、日常的な点検・検査が必要です。劣化具合によっては部品の交換や修理が欠かせません。設備保全には、3つの種類があります。
DXとは?
DXとはデジタルトランスフォーメーションの略称で、デジタル技術を企業や社会に浸透させ、生活をより良いものに変化させることです。
2018年に経済産業省が発表した「産業界におけるデジタルトランスフォーメーションの推進」では、以下のように定義されています。
・企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、ニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
「デジタイゼーション」や「IT化」などと似た意味に捉えられがちですが、概念の規模に違いがあります。
※参考:産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX) (METI/経済産業省)
設備保全の3つの種類
設備保全には事後保全と予防保全、予知保全の3種類があります。以下では、それぞれについて解説します。
1.事後保全
不具合や故障が発生したのちに、修理・部品交換を実施することです。1つの設備にトラブルが発生すると製造ライン全体が停止することもあり、企業に多大な損失を与えかねません。事後保全には、スピード感が求められます。
トラブルが発生した原因を突き止め、適切な修理を実施します。部品交換や異物の除去など、内容はさまざまです。事後保全であれば定期的な点検が必要なくコストを削減できますが、製造ラインの停止といったリスクもあります。
2.予防保全
一定の間隔で、点検・修理・部品交換を実施することです。定期保全とも呼び、設備に異常が発生する以前からトラブルのリスクを取り除きます。予防保全を実施することで、目には見えにくいリスクを察知し、経年劣化に対応できるでしょう。事後保全と比べるとコストはかかりますが、多大な損失を防ぐ効果があります。
3.予知保全
予知保全とは、不具合や故障を察知して、修理・部品交換を実施することです。トラブルが発生する前に対処するという部分は定期保全と同じですが、定期保全では予知はできず、点検に大きなリソースが必要です。DXを取り入れることで、点検・巡回をせずともリスクを察知できます。具体的には、IoTを活用します。
設備にセンサーを組み込み、異常を感知するとインターネットを介して、情報が共有される仕組みです。異常だけでなく稼働時間や温度など情報収集も可能で、最適化にもつながるでしょう。
設備保全のDX化が求められている理由
設備保全のDX化へのニーズが高まっている理由として、人手不足と技術継承が挙げられます。
1.人手不足の問題
人力で点検や巡回を実施していると多くの時間と労力が必要となり、人手不足に陥りやすくなります。企業全体で人手不足となっている場合、点検や巡回に十分な時間をあてられないこともあるでしょう。人手不足が原因で故障につながるケースもあり、効率的なトラブルへの対策が求められます。
2.技術継承の課題
設備保全には専門的な知識や技術が欠かせず、人力で実施するには経験に依存するケースが多くみられます。機械についての知識や修理の技術は短期で修得できるものではなく、継承には教える側・教わる側、双方の人材が必要です。一方で、過去の故障・修理の事例についての情報が企業内で蓄積されていない場合、若手の育成が進みにくいでしょう。
設備保全DXの特徴
設備保全DXには、どのような特徴があるのでしょうか。おもな3つの魅力を解説します。
機能が豊富で拡張性がある
設備保全DXでは、状況に合わせて機能を増減させられます。たとえば、保全業務や問題が発生後の管理のみを実施したり、常時徹底的な管理を実施したりと、企業が求める内容に沿えるでしょう。必要な機能に合わせ、予知保全が可能になることで、設備保全にかかるコストの削減にもつながります。
作業忘れや故障の予防になる
設備保全DXでは、作業忘れを予防する機能が複数備えられています。定期的な点検・巡回などを登録すると保全計画を作成し、共有可能です。必要な作業を日々実施することで設備や機械の故障を防ぎ、製品の品質安定や生産性の向上に役立つでしょう。
保全作業だけでなく技術継承を効率化できる
設備保全DXは保全作業を効率化するだけでなく、技術継承にも貢献します。設備や機械の取扱説明書・図面・マニュアルなどを登録しておくと、必要時に各種デバイスからいつでも確認可能です。蓄積されたデータからマニュアルや動画を作成することで、技術の継承や作業の平準化につながるでしょう。ノウハウの蓄積によって、熟練者に依存する必要性が軽減されます。
設備保全DXのおもな3つの役割
設備保全DXの導入で、具体的に何が変わるのでしょうか。おもな3つの役割を解説します。
1.保全計画の作成
点検の周期と開始日を決定すれば、自動的に保全計画を策定してくれます。点検ごとに、次回の予定も自動で作成可能です。紙での管理では見落としが発生しやすく、チェック機能もありません。DXでは紙と比べて手間を削減でき、点検漏れや確認漏れを防げます。点検時に発見された不具合の箇所は現場でデバイスから入力でき、容易に確認できる点も魅力です。
2.保全作業の支援
事前に取扱説明書や図面、マニュアルなどを登録しておくことで、場所を選ばず確認できます。紙であっても取扱説明書や図面、マニュアルを保管できますが、持ち運ばなければ現場で確認できません。
紙の資料を手に作業を進めると効率が低下し、現場に持参していなければ確認のために移動する必要があり、時間を要します。動画の活用は設備保全DXでなければできず、資料以上に理解度を深められるでしょう。
3.備品や工具の管理
備品や工具の出庫時に出庫処理することで、入出庫作業を確実なものにできます。発注点管理も可能で、設定した数量以下になると自動的に通知してくれます。あらかじめ発注することで、在庫切れを防げるでしょう。備品や工具の出庫確認を紙やExcelで管理すると手間がかかるうえ、棚卸しで数量が合致しないケースが起こりやすくなります。
設備保全DXを実現するIoTの効果
DX化にはIoTが欠かせません。センサーやIPカメラなどを活用して設備・機械の状況を可視化し、データを蓄積することで複数の効果が期待できるでしょう。設備・機械への遠隔での監視によって、人力での点検・巡回が不要になります。点検や修理が必要な際は、技術者が遠隔で指示を出すことで、業務の効率化をもたらせます。
また、点検や修理のデータを蓄積することで作業マニュアルの作成に役立ち、人材育成にも貢献可能です。AIによる機械学習も導入されつつあり、人間よりも高い精度で異常を検知できます。
まとめ
点検・メンテナンス・修理といった設備保全は、製造ラインの安全な稼働や事業の継続に必要不可欠です。ただし、事後保全や予防保全にはリスクがあるため、予知保全を可能にする設備保全DXのニーズが高まっています。機能も豊富で拡張性があり、技術継承までも効率化できる点が大きなメリットです。
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